上越市医院 高田メディカルクリニック
院長 医学博士 古川一雄   [HOME]
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老化防止のための漢方 − その17 − 「 胃腸虚弱 」
 胃腸が弱く、何年も前から体がだるく、気力が無くて困るという63歳の男性(Eさん)が来院されました。先ずEさんに問診してみると、以前は他の医療機関で胃下垂と診断されたことがあったそうです。現在起きている症状としては、数ヶ月前から食欲が無く、下腹部は突っ張り、腹がグルグル鳴って放尿が多くて困っていました。更に、肩が凝り、朝になると目が腫れ、手は握り難く力が入らない、手足が冷える、何年も腹巻を離したことが無く、夜は布団を暖めないと眠れないとのことでした。また、大便は硬めで少量の便が日に数回ありますが、夜間に排尿で起きることはなかったそうです。
 Eさんを診察してみると、腹は陥没し、軟弱無力で、臍部の動悸が強く、心下部は硬く、両側の腹直筋は攣急し、臍下部には棒のような線(正中芯)を触れました。また、胃部では振水音(しんすいおん)が著明でした。
 総合的に判断して、胃腸虚弱は明らかでした。そこで、「四君子湯(しくんしとう)」を処方しました。服薬してから2週間後に少し改善され、気力が出て食欲が増し、目の腫れも引いてきました。1ヵ月後、便通は良くなりましたが、まだダルさは残っていましたので、継続してこの漢方の服薬を続けてもらいました。4ヶ月経過した頃には、大変調子も良くなり、気力が出て、ダルさも殆ど取れて改善されてきました。布団は暖めなくとも眠れるようになりました。
 Eさんの様な気虚には「四君子湯」が適しておりますが、気血両虚の方には「十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)」が有効です。

 「四君子湯」は、中国の宋時代の医学書『太医局方(庶民を救済する為に中国の名医達の処方を纏めた処方集)』を、徽宗により編纂された『和剤局方(わざいきょくほう) 』の中に収穫されている薬方です。昔から主に胃腸疾患に用いられてきました。 この漢方薬は、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)などの4つの生薬が主薬と(なっていることからその名前の由来となって)います。主成分としましては、白朮か蒼朮(ソウジュツ)、大棗(タイソウ) 、生姜(ショウキョウ)、茯苓、人参、甘草などの6種類の生薬から構成されています。適応証(体質)は、虚証(虚弱)、寒証(冷え)、湿証(水分停滞)となります。症状としましては、顔色が悪く、手足も冷えやすい人で食欲不振があり、全身倦怠感、心窩部の不快感や悪心、嘔吐、下痢、腹鳴、膨満感などのあるもの。腹壁は緊張が著しく弱く、心窩部の振水音をしばしば認める者に使用される。慢性胃炎、急性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、下痢、胃下垂、胃アトニーなどに効果があります。

 「十全大補湯」は、中国の宋時代に徽宗により編纂された医学書『和剤局』 に収穫されている薬方です。この漢方は、黄耆(おうぎ)、桂皮(けいひ)、熟地黄(じゅくじおう)、芍薬(しゃくやく)、川弓(せんきゅう)、白朮(ばくじゅつ)、当帰(とうき)、人参(にんじん)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)などの10種類の生薬から構成されています。適応症としましては、手術後・病後・産後の衰弱の疲労・体力低下、疲労倦怠、食欲不振、四肢の冷え、寝汗、貧血、自律神経失調症、食欲不振、低血圧症、神経衰弱、胃腸虚弱、胃下垂、白血病、癌、悪液質、脱肛、子宮出血、痔瘻、腎結核、カリエス、貧血症、慢性肝炎、慢性腎炎、慢性疾患、自律神経失調症などに有効です。


高田メディカルクリニック 院長  古川 一雄


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